アカハライモリ


 アカハライモリ(Cynops pyrrhogaster 

本州、四国、九州、周辺島嶼に広く分布する日本では一番なじみのある有尾類。東北、関東、中間、篠山、渥美、広島種族に分けられる場合もある。現在ではアロザイムとミトコンドリアの分析によって差異があるものの林(1993)、(Shimada et al., 2016)では東北型、関東型、中間型、渥美型、西日本型、南日本型になっている。各種族ごとに繁殖行動に若干の違いもあるようでうまく繁殖出来ない事もあるらしい。

飼育は非常に簡単で、繁殖も容易だ。水槽に20cm程の水を張り、水面から出るぐらいの石や流木で陸地を作り、水草を入れて(産卵にはアナカリスがおすすめ)エアーレーションするだけです。日本に棲むイモリなので温度管理等も特にいらず餌も最初から冷凍赤虫を食べる。レバーなどを与える人もいるようだが自然下で食べるものでもなく栄養も分からないので冷凍赤虫が無難。寿命も長く、20年以上生きることも稀ではない。

自然下では湧き水のある綺麗な水を好み、オタマジャクシ、小さな虫などを食べ春ごろ産卵、水中で生活し冬は田んぼの泥の中や水中で冬眠する。飼育下では特に冬眠させる必要もないが餌は食べなくなる。

エラの生えた幼生は変態すると陸生になり、田んぼの近くの石の下などで見つかるが飼育下ではそのまま成体と同じ環境でも生きていける。ただ成体に食われたり、溺死する事もあるので確実に増やしたい場合は卵を見つけたら隔離し上陸後は浅いアクアテラなどで飼育する。活イトミミズで餌付けて口元にあてると食べるようになれば冷凍赤虫に切り替えたほうがいい。陸生にすると1匹づつ餌をやらないといけない為飼育はかなり面倒になる。

   
 婚姻色が背面まで表現されている個体

   
 赤色が強く表現された個体

   
 大型になる個体群

   
 淡いモスグリーンの個体群

排水溝をうろつく成体(隠岐にて)

画像が悪いので見づらいが雄でしょう。パッと見た感じ、頭の根元付近が幅広い。胴体が寸詰まりで尾が短い。等シルエットでも分かるのだが、なれない人は捕まえて腹部側の後肢の間にある総排泄腔を見て判別して下さい。丸くて大きければ雄、縦に細長ければ雌です。雄は繁殖期には目の横あたりから尻尾にかけて紫色の婚姻色が出ます。


総排泄腔.での雌雄判別

左 (雌)  右 (雄)

総排泄腔で見ると雄の方が丸く大きいのが顕著なのですぐに判別できる。

その他、雄は雌よりも小型で耳腺が発達し背面にキールがあるため、雌に比べ丸みを帯びない。
繁殖期の雄

繁殖期になると雄は耳腺や尾に薄紫の婚姻色が現われる。

防御体勢

飼育下ではあまり見ることが出来ないが、野生のイモリを掴むと左画像のような姿勢で硬直し動かなくなる事がある。

イモリの防御体勢で腹部側の赤い色彩を見せている。持ち上げても水に入れてもこのままの状態で何分も動かない。


イモリ軍団

水質の悪化にも強い種だが本来は湧き水や清水が流れ込む止水を好む。

都市部では見ることが出来なくなっているイモリも自然環境が良好な場所では個体数も非常に多い。

通常日中は物陰に隠れているが左画像は物陰から出して撮影したもの。腰をおろした目の前の枯れ草の下に潜んでいた。1uに満たない範囲でこれだけいると夜間観察したらおそらく一面.のイモリ畑だろうなぁ。 

生息環境

上画像を撮影した場所。田んぼには清水から水をひいてあり近くの湧水にも多くのイモリが見られた。

アカガエル、ヒキガエル、シュレーゲルアオガエルなどの卵が一面に産卵されており、イモリは卵に頭を突っ込んで捕食していた。


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