カイザーツエイモリ


カイザーツエイモリ(Neurergus kaiseri)

イランのザクロス山脈周辺に分布。
標高500〜1750mの乾いた場所に生息し繁殖期は水棲になるようだ。繁殖期はヨーロッパのキーパー曰く水温が下がる秋頃という話だが信憑性は不明。

日本初入荷は00年だろうか?石灰岩を流れる川に生息する水棲種なのでPHを弱アルカリ性に保つなど水質の維持が難しいと言われていたが、わりと水質にはうるさくなく中性で問題なさそうだ。基本的には陸棲種だと思う。

実際の問題は餌だと思う。ショップに入荷してから半年程は結構餌食いもよく飼育は楽だと思われるようだが半年ほどで餌に興味を示さなくなるケースが多い。

温度管理は低温飼育が必要で気温20℃以下、水温は18℃以下を維持したい。
求愛行動は他のNeurergus(crocatus, strauchii , microspilotus)ともに尾を振るスタイルだという。

餌について

左画像はハニーワームを食べる亜成体で、テラリウムで飼育しているが週に1度ぐらいしか餌を食べようとしない。陸棲時の餌としてハニーワーム、小コオロギ、活赤虫を捕食し、水棲時には活赤虫、イトメ、川虫、オタマジャクシ、ビーシュリンプ、赤ヒレ等を与えている。ずらずらと並べてはいるが結局食べない事が多い為様々な餌を与えている。一応羅列したものは食べた。

ホントに餌を食べない種で手間がかかる。特に成体は拒食がひどく、水中でオタマジャクシを目の前にして食べなかった時は「オタマに反応しないなんてイモリじゃねえ!」と驚いた。

当初水棲種という認識で飼育していたので陸棲で飼育したら食べるかもと陸棲飼育に変更するも最初は餌を食べたがじきに食べなくなった。食べる餌を探して食いつないでいる状況。今のところ小さいハニーワームが最も餌食いがよい。
成体と亜成体の腹部

ツエイモリは4種ともに成体の腹部は赤系オレンジで幼体では色素が薄く黄色っぽく見える。

成体では繁殖期には雌雄判別が可能だが幼体や非繁殖期では区別しずらい。判別は総排泄腔で確認できる。

飼育環境

90cm水槽を使用し、水棲飼育がいいのか陸棲飼育がいいのか未だに自信がない為水場を多めにとったアクアテラリウムにして陸地はあまり湿らせてはいない。基本的に陸棲の種だと思うがずっと陸にいるわけでもなく水陸を行ったり来たりしている。

陸でも水中でもすごく神経質な種でシェルターに隠れて出てこない事が多い。

産卵はN.strauchiiと比べ石の真下でなく石の隙間などでも産卵するようで持ち腹の個体では水草に産んだ例もある。この水槽も右側は水草を植えてあり左側は石などをセットしている。

一応PH調整し、PH7.5にしてある。水中フィルターを使用しやや流水になるようにしている。

カイザーツエイモリ種の保存法指定

2010年ドーハで開催されたワシントン条約で本種がサイテスTに指定され、国内では6月23日をもって種の保存法指定種となり、登録なく販売譲渡陳列等が出来なくなった。現在我が家では上記個体は最終的に完全拒食で全滅し、2代目の飼育個体を所有しているが、とりあえず登録しておく事にした。輸入個体は極一部を除き全てWCであり、全てが密輸個体であったそうだ。これほど飼育下死亡率の高い種が野生でも激減してるとあれば保護指定はするべきだと思う。許せないのは希少な種をポックリ死なせた自分の飼育技術である。失敗を踏まえて考えた事は、まず温度である。カイザーの輸入は春なのだが、半年程で拒食し死亡するのは何故なのか?私の見解では4−5月に入荷された個体は半年経つと10−11月である。温度の低下と水質の悪化が考えられるのではないだろうか。現在の飼育スタイルは冬の最低水温は15度を下回らないようにヒーター保温し、夏の最高温度は一括管理の為23℃。夏の平均水温は21.5度程だが餌食いは良い。冬は15℃を下回ると餌食いが極端に悪くなるので、水温が上昇する時期前には死んでしまう(ストレスを含む)のではないだろうか?また水質に関して以前はPHを高く低温飼育と言われていたが全く違うと言える。PHや硬度は水道水でなければ問題無く、10℃前後の低水温では捕食もせず瘠せていく。現在床材は大磯、90X45水槽に底面フィルターを敷き詰め、水中ポンプで底面フィルターと上部フィルターを接続してあり、間に殺菌等を挟んで滅菌している。水量が多い方が水質も安定するので小さい水槽では難しいと思う。水草は入っておらず陸上はザルのかさ上げで作ってある。陸上で見かけるのは年5回程でほぼ水中生活といえる。現在餌喰いは全く問題なく飼育出来ているが一つ心配なのは餌の吐き戻しである。週に2度程給餌するが3回に1回は吐き戻す。太ってくるならば餌が多いと考えられるが、やや痩せている状態なので喉や内臓に何かしらの問題(寄生虫含む)があるのか、小さい餌しか食べられないのか?頭の大きさに対してかなり小さい餌しか呑めてない。人工餌を含め何でも食べるが吐き戻しの少ない餌はミミズ(シマミミズの類は食べない。吐いても分からないだけかも)。繁殖は無理かもしれない。しかしエゴで採集飼育されて保護指定まで追い込まれた本種に対して全力を尽くさないと申し訳ない。
登録申請に使用した画像 

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