卵から幼生の飼育


流水性種飼育一例

流水性種の卵や幼生を飼育するために重要な事 (ハコネ、ヒダ、ブチ、オオダイガハラ、ベッコウなど)
1.20℃以下の水温
  流水性種の生息河川は標高1000m前後の源流域で夏でも水温は低いため都市部では
  夏は常温では飼育することは出来ない。そのため水中クーラーで水温を低く保つか冷蔵庫に
  入れて飼育するようになる。冬は凍らない水温ならば問題は無い。ハコネサンショウウオは特に
  高温には弱い。水中クーラーは幼生期以外は使いづらい為勧められない。
2.フィルターを設置する
  流水性とはいえ流水を作る必要は無いのだが、現地では流れが岩を打ち、滝などもあり
  水中にかなりの酸素を含んでいる為エアーレーションは必要。
3.石を多く入れる
  石は卵を水中で固定し、幼生にはシェルターとなる。流水性種は共食いは少ないが石を大目に
  入れると個体同士での接触が緩和され個体間の強弱などでの拒食や死亡が減る。
4.水換え
  流水性種は変態するまでに1年以上かかるものも多くハコネサンショウウオやレッドサラマンダー
  などでは2年以上かかり幼生の飼育期間は長くかかる。成体ほどは水質にうるさくはないが
  月に1度は3分の1ほど水換えした方が良い。
5.砂利を入れる
  流水性種は流水に適応していて指先に爪が生えている種類も多い。水槽内を動く場合も水底に
  砂利があるほうが移動しやすいようだ。

餌について
 流水性種は卵嚢1房に10個ほどしか卵が入ってない。これは生息環境に小さな餌が少なく、また
 外敵による被害を最小限にするため卵数を少なくし大きな幼生を作り出している。そのため孵化した
 幼生は止水性種と比べ大型なので最初から大きめの餌も食べることができる。
 孵化後1週間を過ぎたあたりからとりあえずイトミミズを与える。与える時は塊では食べることが
 出来ないので水中で振って崩しながら少量入れる。食べるのを確認出来なければ10日過ぎに再度
 与えてみる。イトミミズを入れるとすぐに食いつくようになればその後は冷凍赤虫に切り替えていく。
 私は冷凍赤虫をそのまま水に入れて水面付近で溶かしながら、ほぐれた赤虫を2、3匹つまんで
 幼生の口元で揺らして食べるかどうか様子を見る。イトミミズに餌付いていればだいたいはすぐに
 食べてくれる。さらに幼生が馴れてくると冷凍赤虫を入れるだけで勝手に食べてくれる。
 冷凍赤虫を使って水底に残った残骸は水質悪化を招くので取り除く。

変態について
 変態した幼生は上陸するので簡単に這い上がれるようにスロープのある陸を作ってあげましょう。
 画像の例ではたまたま水槽の仕切り板が余っていたのでそれを斜めにセットして苔を置いているが
 砂利や石で陸を作ってもいい。私は流水性種にはPHが低下するため流木は使わない。
 流水性種は上陸後も水辺付近でしばらく生活するようで野外でも渓流付近で小さな幼体を見かける事
 がある。多少湿度が高いほうがいいのだと思う。という理由で私は上陸幼体は幼生と同じ水槽で餌付
  いて餌の心配が無くなるまでは分けて飼育していない。

上陸後の幼体の管理
 上陸後の飼育環境は基本的に成体に順ずるようになる。水温を水中クーラーで冷やすのではなく
 気温を低くしないといけない。ワインセラーや昆虫用のクーラー又は飼育している部屋をまるごと
 クーラーで冷やすか等が必要になり、飼育設備に費用がかかってくるため子どもや経済力の
 ない学生に飼える生き物ではない。裏技として夏は発砲スチロールに氷をいれてしのぐという手も
 あるが1日に何度か氷を交換しないといけないためかなり手がかかる。家庭用冷蔵庫では冷えすぎて
 上陸個体では餌を食べないこともあるし家族の了承を取りづらい。
 飼育ケース内のレイアウトは床材(砂利、赤玉など)にミズゴケで十分だが成体と違いサイズが
 小さい為初期の餌に苦労する。上陸後1週間ほどは餌を与えず、最初はイトミミズの大きいものを
 1匹取り出して上陸個体の目の前の苔などに置いて食べるか様子を見る。食べなければ日を
 改めて試し3週間ほどしてダメならばコオロギの初令を与えてみる。イトミミズを食べてくれると
 段々馴れてゆき人工餌にも馴れるようになるがコオロギしか興味を示さない場合はあまり餌付かない
 場合も多い。その場合はコオロギやワラジムシなどで飼育するスタイルになることが多い。また上陸後
 まるで餌付かず死んでいく個体も多い。なるべく上陸個体は落ち着かせ色々な餌を試して見る。
 何かを食べだせば体力もついてくるので自然、反応する餌も多くなってくる。
本格的に陸棲へと変態する時期のレイアウト例。
壁面を登るようになるので返しが必要。

止水性種飼育一例

止水性種の卵や幼生を飼育する為に重要な事 (トウキョウ、クロ、トウホク、イモリなど)
1.水草を多く入れる
  止水性種は共食いが非常に多いのでアナカリスやウィローモスを水槽全体に入れる。
  それにより水中に立体ができ個体の接触時による共食いを多少防ぐ事ができる。
2.エアーレーション
  止水性の種類は富栄養化、低酸素の環境でも生息可能なものが多く、その為外鰓が流水性種
  より大きいのだが弱いエアーレーションはあった方が良い。
  エアーポンプからのエアーが幼生を巻き込むほど強ければエアーホースを軽く結ぶと調節できる。
  卵でも過密状態でエアーレーション無しだと孵化する前に酸欠で全滅する。
3.卵は直置きしない
  止水性サンショウウオなどの卵嚢タイプは水底に置かず水草などにひっかけておく。卵嚢の端から
  孵化した幼生が出て行くので端を下にぶら下げておいた方が卵嚢内で出て行けず死ぬ個体は少ない。
  私は直置きする時は卵嚢内である程度孵化したら卵嚢の外皮を数ヶ所破いている。
4.水換えについて
  意外と幼生を水中飼育する際に毎日水を交換する人がいるようなので追記する。
  サンショウウオといえば綺麗な水を好むからと勘違いして毎日水換えするのは間違い。特にプラケース
  等の小さいケースで急な水換えは水質が安定せず負担がかかるので毎日交換する必要はない。
  できるだけ大きなケース(例えば衣装ケースやガラス水槽)にたっぷり水草を入れてあげれば
  変態するまで水換えは不要と言える。減った分だけ足し水するだけで大丈夫です。
餌について
 止水性種は卵嚢1房に30〜60個と卵数が多い。これは止水水域には多数の餌となる微小な生物
 が多くまた外敵となるヤゴなども多い為、孵化サイズを小さくしても1卵嚢中の卵数を増やしたほうが
 生存率が高くなるための戦略なのだろう。種類によってはあとから孵化したものは先に孵化した幼生
 の餌になる為に成長が遅いものや共食い専用モルフができる種類もいる。
 とかく止水性種は貪欲である。そのため餌を切らさないよう毎日少量づつ与えることになる。
 孵化後1週間を過ぎたあたりからブライシュリンプを与える。ブライシュリンプをメインに飼育していると
 成長が早くしっかりした幼生ができるが欠点はめんどくさい。ので私はイトミミズの小さいものを
 与えてしまっている。イトミミズのサイズを気にせず使えるようになると冷凍赤虫に切り替えている。

変態について
 上陸間際の幼生は外鰓と尾のヒレが小さくなり成体の姿に近づく。そういう個体をアクアリウムの
 上陸用水槽を作って移してもいいし、幼生の水槽にそのまま砂利を入れて陸を作ってもいいし、
 流木やホテイアオイなどの浮き草を入れてもいい。いずれにせよ上陸した個体はあまり水が多いと
 溺れて死んでしまう為別の水槽に移す必要がある。(大型水槽で最初からアクアテラで上陸後も
 飼育する場合やアカハライモリ、クシイモリ等一部の種を除く)

上陸後の幼体の管理
 止水性種の幼生は上陸後ビショビショな環境は好まないものが多く、ミズゴケを軽く絞った程度の
 湿度を維持し週2回ほどの給餌の際に様子をみて霧吹きする。温度は基本的には25℃を超えない 
 温度が好ましいが通気が良く、日の当たらない場所ならば飼育可能な種も多い。
 餌の与え方は流水性種に順ずるがより餌付きやすいので流水性種と比べ飼育しやすい。飼育ケースは 小型のもので問題ないがタッパー等では蒸れやすいのでプラケースが使いやすい。
 コオロギの幼虫を餌に使う場合プラケースの蓋にガーゼやキッチンの配水フィルターを挟むと
 餌の脱走を防ぐことができる。
  
 
止水性種の変態幼体用飼育ケース例

床材は砂利よりは焼き赤玉等が湿度の管理はしやすい。
多少の勾配をつけ、1部は湿度を高くとる。

シェルターは必要だがあまり複雑だと幼体の場合、隠れすぎて
管理出来ないので水苔を少量ぐらいが管理しやすい。

給餌はコオロギやワラジ仔のばら撒きが簡単だが
2−3匹の管理ならば1匹ずつ冷凍赤虫などを与えても良い。
最初からピンセットでの給餌はかなりの根気が必要。
変態後1週間を過ぎたあたりから解凍した赤虫やイトメを
1−2匹摘まんで口元で小刻みに揺する。
(ピンセットの先端からチョロリと垂れる程度に持つ)
顔を背けたり、逃げる場合は続行しない。
だいたい食べないので3日おきぐらいで繰り返す。

私はばら撒きである程度育ててから
ピンセットの単独給餌に切り替える事が多い。
変態幼体飼育ケース1例

プリンケースの大きいものを使用。
床材は湿らせたキッチンペーパーで1部水苔を入れている。
こうした小さいケースでも飼育可能だが、短所はピンセットでの
飼育は狭いゆえに難しく、また空気口は開けても密閉度が高く
25℃を越えると蒸れてしまうので保冷が必要になる。

長所としてイモリ等の小さい幼体や神経質な種の幼体、餌食い
の非常に悪い個体や種類にバラ撒き式の給餌方法ながらも
効率よく餌を与える事ができる。
狭くて床が白いので極小の餌でもよく目につくようだ。

どちらかと言うとイモリ属向き。
キッチンペーパーは週に1度は交換する。

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