クロサンショウウオ

 
クロサンショウウオ (Hynobius nigrescens

東北、中部、北陸地方に分布
全長15cmほどの大型の止水性種。

山麓から2000m以上の山地の森林に生息し、ミミズや昆虫類を捕食する。
1月〜5月頃、湖沼等の止水に白色の卵を1対産む。
金沢の一部など地域によっては産卵が早い場所があり、標高の高い場所等で卵嚢が透明の事がある。

トウホクサンショウウオと分布や産卵場が重なる為、両者の見分け方などがよく解説されている。
成体であれば長い尾(先端は側扁し尾長は全長の約半分)、長い手足(全後の四肢が重なる)
体躯が太く、頭が卵型でない等で区別できるが幼体や変異の幅もあるので外見では難しい場合もある。

♀頭は卵型で首が細い 07年12月 ♂前肢が大きく首が太い  07年12月
♂の繁殖期の形態。 頭部の様子 2011年3月

腹部の様子

クロサンショウウオと名前が付いていても腹部は白っぽい。本種の雌雄の判別は容易で総排泄腔の上部に雄は突起があり、前肢が大きい。繁殖期はさらに顕著で雄の頭部は膨らみ、肋条が隆起し、アメフト選手のようになる。

この個体は口元がはれぼったいが、おそらく高齢の為だろう。10年以上生きてるかも。

卵嚢と幼生

白濁した丸い塊が卵嚢で周りには孵化した幼生と卵に入ったままのものが見える。

このような卵嚢を産むのは世界的に見ても本種だけではないだろうか?

佐渡や一部の地域では白濁せず、半透明の卵嚢も確認されている。
繁殖地の様子

産卵場は山地のわりと大きい池や沼、湿原等で他の止水性種よりも水深の深いところを好む。

卵嚢も沼に沈んだ枯れ枝などに産み付けるが沼の中心部などに多く産卵し、手が届くような岸辺にはあまり産まない。(湿地、小沼等ではそうでもない)深いところだと水深1m以上ありそうだ。

4月頃、夜に観察に行くと水中の枝につかまって、ユラユラ揺れている雄を観察できる。

モリアオガエルと産卵池がよく重なる。

産卵数の多い自然林の池 産卵数の少ない畑の中の池
クロサンショウウオ幼生 尾の黒い斑紋がよく分かる。
成長した幼体

上陸後1年半の個体。
成体よりも多くの白点を持つ。Hynobiusは
全体的に幼体のうちは白点が多い。
07年12月

飼育環境

90cm水槽を使用。エゾサンショウウオと共同生活をしいられてる。、床材は焼き赤玉。半分が水場で水深7cm程になっているが、繁殖を狙うなら春は水深を40cm程はとらないとダメだろう。止水性種の中では繁殖は難しいようで産卵させた経験はない。

気温は標高が高いところや寒冷地に生息するわりに高めでも大丈夫だ。25度を越えても生きているが高温で免疫力が低下すると病気が出たり、死ぬので低めが安心。

餌はすぐにピンセットからとるようになる。ハニーワームを目の前に落とし、食べるようなら次の週にはピンセットから食べる個体もいる。口元にもっていってすぐ食べるようになれば、人工餌でもなんでも食べる。

クロサンショウウオ繁殖例 2009 3月
繁殖形態の♂ 左右の痩せた個体が産卵後の♀
クロサンショウウオの産卵は他の止水性種のように浅い場所ではあまり確認例が無く、どちらかというと深い場所を好む傾向が見られると思っていた。水深をとった水槽を作るのがメンドクサイので数十年クロの繁殖に本気で着手してこなかったが、普通種で産卵させられないのも癪なので07年から専用水槽を作って繁殖を狙いだした。しかし2年続けて失敗。09年に産卵に成功した。07、08年と専用水槽投入を2月後半から3月初旬に行ったが、「生息地繁殖池では真冬にも水底に成体が確認出来る事がある」、「暖冬の年は1月にも産卵している」等を踏まえ、09年は1月から成体を繁殖水槽へ投入した。1月から3月にかけて3−4回、3分の1ほど換水し刺激を与えるが♀が排卵している様子は無かった。雪解け水が大量に流れ込んで大幅な水質変化による刺激を与えようかと3月20日に9割の水を換水すると同23日に排卵し、お腹が膨れた♀を確認。同25日に産卵した。寒波がきたり雨の影響も(その他色々)あるので、換水だけが産卵のリリーサーでは無いが重要な要因の1つだとは思う。
2012年に繁殖した個体

09年より12年までの4年間、毎年産卵させる事ができた。早めの親投入と換水がキーワードだと思う。
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